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2008年7月18日 (金)

平成版「蒸米からみた酒造」を読む

昨日からの続きです。

いきなり本題へ参りましょう。

中村政五郎著「蒸米からみた酒造」に書いてある良い蒸米とは?

「消化絶好軟強性」になっていること、なのだそうです。

世間一般に言われる「外硬内軟」に比べ、いまいちわかりづらい表現です。

中村氏の説明によれば、酵素の作用を受けやすい性質になっていること、つまり、デンプンは糖化されやすく、タンパク質も分解されやすい状態へ化学的変化をしている蒸米を指すのだそうです。

「外硬内軟」よりも化学的な発想ですね。

この状態の蒸米を得るためには、「蒸熟を煮え過ぎ的に完成」させなければならない、としています。

これは「蒸米が充分に透明性となり、光沢を出し本来の色を発揮し、弾力も充分に強くなり、軟粒でありながら捻潰し難く、捻り餅は切れずに長く伸びる」状態であるそうです。

それでは、どのように蒸せば良いのか?

①甑内を充分に高圧にする必用がある(完全蒸熟を目的とする)

 このために、甑の穴、コマの溝、竈の構造が完全である必要があるとしています。

②甑内蒸気の分布を均等にしなければならない(均等蒸熟を目的とする)

 このために、米の水切りを完全にし、米置きは湯が沸騰し蒸気の圧力が充分に強くなってから行うことにしなければならない、つまり、「抜け掛け」の発想がここに見られます。

蒸しただけで終わりではありません。

①、②で行われた完全蒸熟、均等蒸熟の条件を充たして充分に蒸した後、さらに「充分なる熟まし(うまし)」をしなければならない、としています。

熟まし(うまし)とは、どういう工程であるのか?

文脈から推測するには、甑に留め置くことのようです。

なぜ「充分な熟まし(うまし)」が必要なのか?

中村氏によると、軟強的蒸熟を目的とするとしています。

このことについて私は、「埋飯(いけめし)」と同様の効果があったのではないか、と考えます。

つまり、高温多湿条件下において蒸米表面のα化からβ化への変化を期待したのではないかと。

充分な熟ましにより、蒸米内部はα化であり、外側がβ化している状態、軟強的蒸熟の目的が達せられたのでしょう。

「外硬内軟」は、蒸し直後に達せられるものではなく、「蒸し+熟まし」がセットになって達成される蒸米の理想の状態だということになります。

以上の「硬く蒸して熟まして軟化」する方法を「硬蒸熟軟(こうじょうじゅくなん)式法」と自ら命名しています。

ちなみに、醪の発酵形式を指す言葉である、「前急後緩」、「前緩後急」は、中村政五郎氏の命名です。

しかし、「硬蒸熟軟(こうじょうじゅくなん)式法」は、徹底的に実行するものがいないと嘆いているように、あまり普及しなかった模様です。

本日はこれまで。

明日は、「硬蒸熟軟式法」が普及しなかった理由について書いてみたいと思います。

Photo 写真は、七右エ門窯の隣、平泉寺(へいせんじ)境内にある沙羅双樹。

白い花を一輪咲かせておりました。

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