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2008年10月28日 (火)

「酒造総典」を読む

今月、菊姫ライブラリーから芝田喜三代著「酒造総典」が出版されたそうです。

今まで菊姫ライブラリーから出版された本の著者は、江田鎌治郎、小穴富司雄らのビッグネームでした。

今回は芝田喜三代氏。

正直、上記の2名に比べ、小物感があります。

ただ、「酒造総典」は読み易く、酒造技術史を知る上でためになる面白い本です。

芝田氏は、蒸米の重要性を説いた東京税務監督局鑑定官の後身、東京国税局鑑定官室所属だけあって、「蒸きょう(蒸し)」の項目は充実しております。

「一、酒造において浸漬米を強い蒸気で蒸して、弾力があって且つ『しっかり』した完全蒸し米を造ることを『蒸きょう』と云う。

二、健全な酒は完全な蒸米から、と云われている通り、良い蒸米を得ることが酒造の第一歩であって、酒造の大勢を決定する。

三、蒸米は外が硬く、内部が軟らかく蒸せていることが第一の条件である。」(p.84,85)

これを読んだだけで信頼に値する本だと思ってしまいます。

蒸し時間は硬質米や濃厚な酒を望む場合、80分以上蒸すことを勧めており、増醸酒(三増酒)の原もろみの蒸米の蒸し時間も80分間くらいが望ましいとしています。

但し、吟醸の蒸し時間は40分程度が良いとしています。

昔から、吟醸は、蒸し時間が短いほうが良いとする意見は多いのです。

これはなぜなのか?

私の考えでは、良く蒸すと味が濃い味となり、きれいな味が尊重されたかつての吟醸に合わなかった、ということだと思います。

現在のグルコース濃度が高い吟醸には、蒸し時間が長いほうが向いているような気もするのですが。

蒸米の話は、まずはここまでにしましょう。

面白いのは、芝田氏の吟醸酒についての考えです。

吟醸酒は、市販酒として販売すべきではなく、むしろ市販酒に吟醸香はいらない、とする立場を取っております。吟醸香は珍しいから「さわがれる」のである、と。

誰しも酒の覚え初めに、吟醸香のある酒に驚き、これが良いものだ、と刷り込まれ、有難がりますが、数をこなすうちにむしろ吟醸香などないほうが飲み飽きせず飲めるようになるものです。

そもそも「吟醸香=良い酒」という図式は、伝統にのっとった味覚でもなく、本能的なものではなく、わかりやすい初歩的な味覚(甘味とか果実香)に珍しいから「さわいでいた」だけではなかったのではないでしょうか?

同じ目標に向かって吟醸を造ることは造り手にとって技術研鑽として意義はあっても、出来た酒は飲み手にとって最高の酒質である保証はないのです。

むしろ、造り手は現在の出品酒は飲める代物ではない、という認識でありながら、金賞を獲りに行くためしぶしぶ、高い香りの出る酵母を使用して大吟醸を造っているのです。

ただ、酵母の選択を誤らなければ、高精白の良さに伴って、飲み易さ、品の良さ、が向上することは間違いないので、酵母の選択というのは重要であると考えます。

戦前から、吟醸批判、鑑評会批判というのはあって、批判の対象は違えど本質は変わっていないんですよね。

ここに歴史から学ぶことの必要性があります。

菊姫ライブラリーは酒造技術書の歴史的名著を次々出してますので、酒造技術者ならばぜひ読んでいただきたいシリーズです。

菊姫ライブラリーは高いって?

いや、私が古本屋から買った労力と本代に比べれば全然安いものです。

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